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脊椎・脊髄班

[ 概要 ]

慶應義塾大学の脊椎・脊髄診療班は日本のパイオニアとして、片開き式頚部脊柱管拡大術(ELAP)、経皮的髄核摘出術(PN)などオリジナリティーが高く、世界に広く用いられている手術術式を考案し、この分野で指導的役割を果たしてきました。現在7名の専門医(脊椎内視鏡下手術・技術認定医2名)を擁し、年間手術件数は800件を超えています。また当班では脊髄再生、椎間板や側弯症の原因遺伝子同定、椎間板の加齢変化に関するMRIや軟骨代謝マーカーを用いた研究、新しい医療用デバイスの開発など、さまざまな基礎的および臨床的研究を行っております。



[ スタッフ紹介 ]

渡辺 航太 Kota Watanabe

准教授
卒業年度 1997年
専門 脊椎一般、脊柱変形、腰椎内視鏡下手術、側弯症
留学 2005年 - 2006年 ワシントン大学(アメリカ)

名越 慈人 Narihito Nagoshi

専任講師
卒業年度 2002年
専門 脊椎変性疾患、脊髄腫瘍、脊椎外傷、脊髄再生
留学 2014年 - 2015年 トロント大学(カナダ)

鈴木 悟士 Satoshi Suzuki

講師
卒業年度 2007年
専門 脊椎脊髄一般、椎間板代謝、脊柱変形

尾崎 正大 Masahiro Ozaki

講師
卒業年度 2007年
専門 脊椎脊髄一般、脊椎外傷、脊髄再生

武田和樹 Kazuki Takeda

助教
卒業年度 2008年
専門 脊椎脊髄一般、脊柱変形、側弯症
留学 2022-2023年 カリフォルニア大学(アメリカ)

大久保 寿樹 Toshiki Okubo

助教
卒業年度 2009年
専門 脊椎脊髄一般、脊髄腫瘍、脊髄再生、脊椎外傷

伊賀 隆史 Takahito Iga

特任助教
卒業年度 2012年
専門 脊椎脊髄一般 脊椎外傷 骨内血管

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[ 実績紹介 ]

小児脊柱変形に対する矯正手術

思春期特発性側弯症をはじめとする脊柱変形に対して、椎弓根スクリューを使用した変形矯正固定術により高い矯正率を達成しています。早期発症側弯症に対しては、Growing Rod法、VEPTR法などの成長温存手術も積極的に行っています。手術だけではなく、人工知能(AI)を用いた側弯症診療サポートツールの開発や、側弯症の原因遺伝子の探索(すでに20個以上の原因遺伝子を同定)など、側弯症の早期発見、早期治療に向けた様々な研究も行っています。

成人脊柱変形に対する矯正固定術

小児期の側弯症の遺残、成人期の椎間板変性を基盤に発症する変性側弯症、椎体骨折後の変形治癒などが該当します。私たちはこれまでの豊富な経験に基づき、適切な術式選択(症例により骨盤固定を回避、側方椎体間固定術を併用した二期的手術、など)や合併症を最小限にするよう対策(術前の骨粗鬆症治療、スコアリング評価を用いたリスク評価、固定近位への高分子ポリエチレンテープを用いたテタリングなど)を行っています。

脊髄腫瘍(髄内・髄外)をはじめとした脊髄疾患に対する外科的治療

脊髄腫瘍は比較的まれな疾患ですが、当院は年間で髄外腫瘍 約70-80件、髄内腫瘍 約30件と日本一の手術件数を誇っています。顕微鏡下での手術に加え、術中モニタリングやCUSA(Cavitron Ultrasonic Surgical Aspirator)の併用により、広範囲にわたる髄内腫瘍やダンベル型腫瘍など非常に難易度が高い症例でも良好な治療成績を得ています。また脊髄腫瘍以外の脊髄疾患(脊髄ヘルニア、くも膜嚢腫、脊髄空洞症など)にも対応し、特に難治性疾患である脊髄動静脈瘻に関しては術中血管造影可能なハイブリット室で当院脳神経外科 血管内治療班と合同で手術加療も行なっています。

転移性脊椎腫瘍に対する手術治療

近年のがん治療の進歩により、脊椎に転移を生じたいわゆる「進行がん」の患者さんであっても、日常生活の質を落とさずにがんの治療を続けることが可能になってきました。当院では、痛みや麻痺などによる患者さんの苦痛を少しでも軽減するとともに、脊椎転移の患者さんががん治療を継続できるように、複数科の医師(骨転移診療センター https://www.hosp.keio.ac.jp/annai/shinryo/center-for-bone-metastasis-management/)で意見を交わして治療方針を決定し、手術治療が必要な患者さんに手術を行っています。

腰部脊柱管狭窄症に対する棘突起縦割アプローチ

社会の高齢化に伴い脊柱管狭窄症が増加しています。本症に対するスタンダードな手術である椎弓切除術において、術後の疼痛軽減、安静期間の短縮、腰背部の筋肉、靭帯、骨など正常組織の温存を目的とした腰椎棘突起縦割式椎弓切除術を考案しました。

XLIF(エックスリフ)

MIS-TLIFやミストと同様に日本で普及しつつある低侵襲手術で、特にXLIF(エックスリフ)は全国でも限られた医師と医療機関でのみ実施されており、すでに数多くの実績があります。また、病態によりOLIF(オーリフ)と呼ばれる類似の手技も導入しています。
手術では側腹部に約4cmの傷で手術を実施します。この手技の最大の利点は神経を直接触らないで神経を圧迫から解除する事にあります。側腹部に約4cmの傷から、右下の図のように神経機能を随時確認し重要な神経を避けながら椎間板内に人工骨を移植します。その後、腰部から固定術を行います。原則、手術翌日より起立・歩行を開始します。入院期間は最短で約7日程度ですが、病態により異なります。また手術後は硬いコルセットを装着します。

経皮的椎体形成術(Balloon Kyphoplasty:BKP)

脊椎圧迫骨折や転移性脊椎腫瘍による病的骨折に対して世界中で行われている低侵襲経皮的椎体形成術(Percutaneous Vertebroplasty:PVP)の1手術法です。全身麻酔下に背中の約5mmの傷2ヶ所から細い針を骨折椎体に挿入します。その針を介して風船(Balloon)を骨折椎体内に設置し、ゆっくりと潰れた骨を整復・復元します。整復後に除去した風船のスペースにPMMAセメント(人工骨)を注入して、骨折を人工的に接合します。原則、手術翌日より起立・歩行を開始します。入院期間は最短で約7日程度ですが、病態により異なります。また手術後は軟らかいコルセットを装着します。

頚椎人工椎間板置換術

頚椎変性疾患に伴う神経障害に対して、様々な手術法がありますが、前方からは主に前方除圧固定術が行われてきました。人工椎間板置換術は、椎間板を摘出した後に可動性を有するインプラントを設置する手術手技であり、椎間の可動性を保持することで新たな障害発生を防ぐことが可能と考えられています。現在は国内でも限られた施設でのみ施行可能となっており、当院も実施施設に指定されています。

腰椎椎間板ヘルニアに対する椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)

椎間板内コンドリアーゼ治療(ヘルニコア)は、椎間板ヘルニアによる神経の圧迫を緩和するために、椎間板内に酵素を注入して椎間板を縮小させる治療法です。当院では、この治療を一泊二日で局所麻酔下にて行っています。手術を避けたい患者さんにとって効果的で低侵襲な選択肢として期待されており、術後成績も確立されています。

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