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Traveling Fellow & 留学

日本脊椎脊髄病学会 Asia Traveling Fellow 報告記

藤田 順之

中国 Nanjing Drum Tower Hospital (南京鼓楼医院)


Nanjing Drum Tower Hospital 脊髄スタッフ(中央が筆者)

脊柱変形で有名な歴史ある病院で、約3000床のベッド数と近代的な造りの建物が印象的でした。思春期特発性側弯症患者が多く入院し、術前に牽引が必要な症候性側弯などの重篤な脊柱変形患者が多く驚きました。教授、海外留学経験スタッフをはじめ、学生やレジデントも参加して毎朝症例検討します。臨床所見をみるため患者さんを呼び、手術方針を決定。年間脊柱変形手術数は約800例、O-arm も準備され、高いレベルの手術を施行しています。思春期特発性側弯症に対し、椎弓根スクリューを電動で刺入し、強直性脊椎炎患者で、ear-on-shoulderの患者に対するC7PSOが行われ、無事手術を終えていました。入院患者のみならず、装具療法などでみている患者に対してもデータを採取しており、学生がデータ入力を行っています。装具療法のデータは約1万例に達し、これらのデータを用いた学会や英文論文の発表も精力的でした。日本での臨床研究の症例数の違いを考えると、より日本の土壌にあった特色ある研究を計画する必要性を痛感しました。脊柱変形診療の規模の大きさに圧倒されました。

マレーシア University Malaya

マレーシアで初めて設立された最高レベルの大学です。側弯症の他、外傷や変性疾患を取り扱っており、期間中は思春期特発性側弯症の症例が多かったため、全例手術に参加しました。手術は丁寧にneck tiltやバランス考慮の術前計画がたてられ、必ず熟練した2人の術者が参加し短時間で終えていました。術中は工程ごとに確認、作業に漏れがないように全員で注意しているのが印象的でした。患者さん対応も丁寧で、2人の医師から異なる時間に手術説明を受け、手術の進捗状況はSNSで患者家族に通知するシステムが構築されており、見習うべきものが多いと感じました。近年、脊柱変形を中心に多くの英文論文が発刊されており、臨床研究におけるアジアのレベルの高さも改めて感じました。
教授、諸先生方はお人柄も良く、毎食を共にし、マレー料理・他各国アジアの味をご馳走になりました。祝日には、猿山やクルージング・蛍の鑑賞まで連れていっていただきました。日本に来ていただく脊椎外科医に対しても、彼らと同じようにアテンドする事が大切であることを実感しました。また、大々的に告知された我々の講演に関しては、多くの聴衆が集まり有意義な機会となりました。私は椎間板変性に対する基礎的研究の講演・日本での症例報告などのプレゼンテーション・ディスカッションを担当いたしました。


手術は全員参加

懇親会(左から2番目が筆者)

今回、数多くの重度の脊柱変形疾患を扱うNanjing Drum Tower Hospital、患者本位の医療を提供するUniversity Malayaでの計2週間の海外研修は、大変貴重な経験となりました。今後も両国との交流を維持し、日本の脊椎外科の発展に貢献できるように努力し、今後も多くの先生方がAsia Traveling Fellowshipに参加される事に期待します。

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