日本-香港整形外科学会
JOA-HKOA Exchanging Traveling Fellow 報告記
小林 英介
Prince of wales hospital, Hong Kong University(HKU)
Dr. KC Wang指導の下、骨盤ナビゲーション手術のトレーニング(左が筆者)
香港最高の骨軟部腫瘍外科医Dr. KC Wang在籍のPrince of wales hospitalを訪問しました。ナビゲーションを用いた骨腫瘍の手術で世界的に有名な病院で、数多くの論文を執筆されています。整形外科140床程、骨肉腫の患者さんは年間15例程度治療。外来、病棟を見学後、ナビゲーションシステムの開発/トレーニングが行われる部屋に伺いました。Dr. KC Wangと4時間に渡り、手術や腫瘍学から日常診療のあり方まで熱く議論しました。骨盤の模型を用いてナビゲーション手術のデモも実施し、刺激的な時間を過ごせました(右写真)。保険制度の違いから、自由にカスタムメイドのインプラントを作製、使用ができる環境であることも知りました。
HKOA年次総会
本年度テーマは「Hip Journey- Discover & Recover」でした。学会前日に会長招宴ディナーが催され、骨軟部腫瘍が専門の私には、分野一流の先生方、各国のフェローの先生方とお話させていただく機会は光栄かつ貴重な経験でした。垣根を越えての出会いこそがTraveling Fellowの醍醐味です。学会初日には晩餐会が催され、各国のフェローが壇上で学会長より表彰されました(左下写真)。私は「骨腫瘍の術後再建方法および骨巨細胞腫におけるデノスマブを用いた治療」について発表、質の高い質問をいくつかいただきました。
各国のフェローおよび学会長と、学会晩餐会にて(左が筆者)
HKOAでのガーラディナー(左が筆者)
Udayana University
インドネシアでの一コマ(右から2番目が筆者)
今回の東アジア訪問を好機に、先進国以外のASEAN諸国の骨軟部腫瘍の治療実態を見学すべく、施設にアプライ、インドネシアのバリ島 Udayana大学の骨軟部腫瘍外科医と接触することができ、HKOAの前に2日間の訪問が実現いたしました。日夜に渡るカンファレンス・外来・病棟・新病院の視察と見学をさせていただき、47人の整形外科レジデントに骨軟部腫瘍のレクチャーさせていただく機会も得ました。またSarcoma boardにも参加し、放射線科医・病理医・腫瘍内科・小児科医ともディスカッションができました。日本では90%程度患肢温存できる骨肉腫の温存率が50%以下しかなく、腫瘍外来の患者の中に多くの結核や真菌感染の患者がいる現実も目の当たりにしました。保険がない為、治療を拒否せざるを得ない状況に、日本での医療環境に改めて感謝すると同時に、アジアにおける骨軟部腫瘍の治療成績向上の為に将来手助けできることを考えたいと痛感しました。みなさま非常に親日家で、滞在から食事まで全てにおいて歓待していただき、筆舌に尽くしがたい感謝の気持ちです。
先進国の香港および発展途上国のインドネシアという社会的にもアンビバレントな2国を同時期に訪問できたことは極めて意義深い経験です。日整会のみならず、ひいては社会のために貢献する仕事ができるように一層精進して参りたいと強く思いました。