
神経解剖学者Ramon y Cajalが「成体哺乳類の中枢神経系は一度損傷を受けると再生しない」と述べて以来、中枢神経である脊髄の損傷は治らないと信じられてきました。脊髄損傷は広範な知覚・運動・自律神経系のダメージをもたらし、医学が目覚ましい進歩を遂げた現在でも、有効な治療方法は確立されていません。我々は脊髄損傷に対する再生医療の戦略として神経幹細胞やiPS細胞 (induced pluripotent stem cells)を用いた細胞移植療法を中心にその有効性を報告してきました。さらに、詳細な画像診断ツールの開発やリハビリテーションとの併用など、脊髄再生を目指して様々な面から包括的な研究を試みています。

名越 慈人 Narihito Nagoshi
専任講師 | |
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卒業年度 | 2002年 |
専門 | 脊椎変性疾患、脊椎外傷、脊髄再生 |
留学 | 2014年 - 2015年 トロント大学(カナダ) |
[脊髄再生医療の臨床研究について Clinical Study for Spinal Cord Regeneration]
当科で計画している脊髄再生の臨床研究についてはこちらをご覧ください。
脊髄再生医療 慶應義塾大学整形外科HPはこちら
臨床における脊髄損傷の現状
従来の手術療法では脊髄の再生は困難であった。



サル損傷脊髄に対するヒト神経幹細胞移植
移植により神経再生と運動機能回復が認められた。

iPS細胞由来神経幹細胞による治療
iPS細胞から神経幹細胞への誘導に成功。移植による有効性を確認。

複合治療により期待できる脊髄再生効果
神経幹細胞/前駆細胞の移植に肝細胞増殖因子とスキャフォールドを加えることで、損傷後の脊髄微小環境を改善し、再生足場の形成による新たな神経回路の構築が期待できます。


脊髄損傷の再生を促すリハビリと磁気・電気刺激
損傷部に細胞移植を行うことに加え、経頭蓋磁気刺激(TMS)や脊髄硬膜外電気刺激(EES)とリハビリを併用することで、損傷部神経可塑性の促進がされることを動物モデルにより検証しています。

慢性期脊髄損傷に対する試験プロトコールの概要
