2019年
2019年11月26日
伊藤 修平(90回)第54回日本脊髄障害医学会にて学会奨励賞 (基礎部門)受賞
2019年10月31日から11月1日に秋田県秋田キャッスルホテル・秋田市にぎわい交流館AUで開催された第54回日本脊髄障害医学会において、伊藤修平君が学会奨励賞 (基礎部門)を受賞した。
本学会は、東京パラリンピックが開催された2年後の1966年、当時の急速なモータリゼーションの発達による脊髄損傷患者の急増に反映される形で、日本パラプレジア医学会として第1回大会が開催された。その後、回を重ねるごとに発展を遂げ、脊髄再生医療という新しい波にも呼応すべく、2002年に日本脊髄障害医学会に名称を改め、現在では脊髄損傷を中心とした脊髄障害の病態、治療、管理、リハビリテーションなどに関する研究発表、知識の交換、研究者の交流の場となっている。
会員数は1300名を超え、脊髄障害に関係する整形外科、脳神経外科、泌尿器科、リハビリテーション科、神経内科などの医師や関連するコメディカル等、多岐にわたる職種が一同に会する学際的学会である。
本賞は毎年の応募演題の中から最も優れた発表を行った者に対して、基礎部門・臨床部門各1演題ずつに授与される大変名誉のある賞である。
伊藤君は2015年4月より大学院研究科博士課程へ入学後、整形外科 中村雅也教授、生理学 岡野栄之教授に師事し、iPS細胞を用いた脊髄再生医療の研究、特にLOTUSという新規治療物質を細胞移植療法に応用する治療方法の確立に従事している。
本研究では、Nogo receptorのアンタゴニストであるLOTUSをヒトiPS細胞由来神経幹/前駆細胞(hiPSC-NS/PCs)に遺伝子導入し、軸索再生阻害因子の作用を抑制し、軸索伸長を促進することを明らかにした。
さらに、LOTUSを遺伝子導入したhiPSC-NS/PCsを免疫不全マウス脊髄圧挫損傷モデルに移植し、通常の細胞移植よりも優れた運動機能回復を得ることに成功した。
本研究は、脊髄損傷に対する細胞移植に新規治療物質LOTUSを遺伝子導入することで移植療法の効果を増強し、現在有効な治療方法が確立されていない慢性期脊髄損傷治療への発展も期待できる点が評価され、受賞に至った。
脊髄損傷により生じた麻痺に対する有効な治療法はないと考えられてきたが、近年の集学的医療および基礎研究の進歩により、再生医療への扉が今まさに開こうとしている。
特にiPS細胞を用いた細胞移植療法に関する研究は着実に進歩しており、臨床応用へ向けてあと一歩のところまできている。
細胞移植療法を確実に患者さんに届けるために、基礎研究をさらに進めていくことが大切であり、今回受賞した伊藤君の更なる飛躍を期待したい。
(名越慈人 整形外科 81回)