2019年
2019年02月27日
大久保寿樹 (整88回)Cervical Spine Research Society (CSRS) 2018 1st Place Basic Science Research Award受賞
2018年12月6日-8日にアメリカのスコッツデールで開催されたCervical Spine Research Society (CSRS; 国際頚椎学会)の第46回 Annual Meetingにおいて、大久保寿樹が、演題名“Transplantation of neural stem/progenitor cell derived from human iPS cells with gamma-secretase inhibitor treatment promotes motor functional recovery and axonal regrowth after chronic spinal cord injury”で、2018年度の1st Place Basic Science Research Awardを受賞した。
CSRSは脊椎脊髄病の頚椎分野において最も権威のある国際学会であり、演題採択率は約10%と極めて少ない。本賞は頚椎分野における基礎研究に関して、優れた業績に与えられる賞である。上位3名が表彰されるが、その中で大久保君は栄えある第1位に輝いた。
大久保は2014年4月から2018年3月まで大学院医学研究科博士課程に在学し、中村雅也教授(整 66回)の指導の下で、ヒトiPS細胞を用いた脊髄損傷の細胞移植およびその臨床応用に関する研究に従事していた。
今回の受賞研究は、慢性期脊髄損傷に対するiPS細胞移植の治療効果を検討した内容である。
大久保の所属する脊髄再生の研究チームでは、これまで亜急性期の脊髄損傷モデル動物に対し、ヒトiPS細胞由来神経幹/前駆細胞移植の有効性を報告している。
しかし慢性期脊髄損傷に対し、細胞移植治療単独で有効性を示した報告は国内外を含め極めて少ない。
大久保はこれまで、Notchシグナルを阻害する薬剤(Gamma secretase inhibitor; GSI)を用い、移植する前の神経幹/前駆細胞を終末期ニューロンへと分化させることにより、移植後の腫瘍化が抑制できることを報告した (Stem Cell Reports, 2016)。本研究ではその効果を利用し、慢性期脊髄損傷へ移植したところ、GSI前処理によって誘導した細胞を移植した群において、有意な運動機能の改善を認めた。
しかし、亜急性期脊髄損傷に対する細胞移植治療の効果と比較し、その改善率は軽度であったため、今後は軸索伸長を促進する薬剤やリハビリテーションの併用などの集学的な治療を行うことで、機能改善の向上を目指していきたいと考えている。
脊髄再生研究グループでは、ヒトiPS細胞を用いた移植治療の臨床応用を目指している。
大久保が発表した本研究内容は、安全性及び有効性の観点から臨床応用に向けて非常に重要な結果と考えており、今後のさらなる展開が期待される。
(名越慈人 整形外科 81回)