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2015年

2015年07月13日

北村和也(81回)が2015国際頚椎学会 ヨーロッパ部門 Mario Boni Poster Awardを受賞

2015年5月26-28日にロンドン・大英博物館で開催されたCervical Spine Research Society European Section (CSRS-ES; 国際頚椎学会 ヨーロッパ部門)において、北村和也君(81回)が、“Intrathecal Administration of Recombinant Human Hepatocyte Growth Factor for Acute Spinal Cord Injury: Road from Bench to Clinical Trial and Future Perspective”の演題にてMario Boni Poster Awardを受賞した。CSRS-ESはCSRS(北米)に続いて1984年に創設された頚椎疾患の臨床と基礎領域で最も歴史と権威のある学会の1つである。Mario Boni AwardはCSRS-ES創設者の名を冠した栄誉ある学会賞であり、昨年、一昨年と青山龍馬君(78回)、山根淳一君(79回)がそれぞれ受賞しており、当教室から3年連続受賞の快挙となった。
急性期脊髄損傷に対してはステロイド大量療法が唯一の薬物治療であるが、近年ではその有効性が疑問視され、有効かつ安全な治療の確立が急務である。肝細胞増殖因子(Hepatocyte Growth Factor; HGF)は様々な実質臓器において、障害時の内在性修復因子として重要な働きを持つことが知られていたが、中枢神経系における働きは不明であった。北村君は10年前に戸山芳昭前教授が主催する整形外科大学院に入学し、生理学教室の岡野教授との共同研究で、ラット胸髄損傷モデルに対するHGF遺伝子治療の有効性を報告し、さらにその後も臨床応用を目指して、ヒト組換えHGF蛋白(rhHGF)髄腔内投与の有効性を検討してきた。霊長類コモンマーモセット頚髄損傷モデルを用いて、rhHGFを髄腔内に損傷後4週間持続投与することで損傷範囲が縮小し、良好な四肢運動機能回復が得られることを報告した。これは、霊長類脊髄損傷に対する薬物治療の有効性を世界で初めて報告した研究であった。
急性期脊髄損傷には、受傷直後は完全麻痺を呈していても、その後自然回復する患者さんが数多く含まれており、臨床治験ではこれらの患者さんを可能な限り除外した上で治療効果を評価することが極めて重要となる。そこで北村君は大学院卒業後も研究に従事し、治験デザインを決定するために求められるrhHGF髄腔内投与のtherapeutic time windowを検討するとともに、損傷後3日目までに一切の上肢運動機能回復を示さない重度頚髄損傷マーモセットに対しても本治療が有効であることを明らかにした。北村君はこれまでにもCSRS(北米)、ORS(米国整形外科基礎学会)、ASIA(米国脊髄損傷学会)において権威ある賞を受賞しているが、臨床治験開始へ向けて積み上げてきた10年間の“from bench to bedside”の過程を報告したことが今回の受賞につながったものと考えられる。
これらの結果に基づき、当教室はついに2014年6月より、国内2大脊髄損傷センターの協力のもと、急性期脊髄損傷に対するrhHGF髄腔内投与の臨床治験を開始した。本治療の確立により、これまでに人類がなし得なかった損傷脊髄の再生が大いに期待されている。
(石井賢 72回)


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