ニュース&トピックス

ENGLISH

新着情報

2013年

2013年04月05日

Glioblastomaに対する新たな分子標的治療に関する共同研究成果がPNASに掲載されました

Glioblastoma(GBM)は脳・脊髄腫瘍の中で最も高悪性度であり、1年生存率が約50%と予後が最も不良である。外科的治療と放射線療法・テモゾロミドなどの化学療法の併用が現在唯一有効な治療とされるが高率に再発する。再発の原因として、腫瘍細胞の化学療法への抵抗性が挙げられるが、そのメカニズムは不明である。これまでも、様々な免疫療法や分子標的療法が試行されているが画期的な改善は得られていない。
整形外科学教室の岩波明生は留学先のUCLAでGBM患者の腫瘍組織を調べたところ、通常のガンでは発現が低下している腫瘍抑制因子のPMLがGBM患者の4割でむしろ高発現していることに気がついた。留学先のラボでは、以前からGBMに対する新しい分子標的治療の有効性を臨床治験を行い報告しているが、その中でGBM患者の約9割でmTORシグナルが亢進しているにも関わらず、mTOR阻害剤であるRapamycinの臨床治験の有効性は今ひとつであったことに注目した。化学療法前後の同じ患者の腫瘍組織におけるPML発現を比較すると、興味深いことにRapamycin投与後にすべての患者でPML発現は上昇していた。岩波はRapamycin抵抗性の原因として、PMLの発現が上昇することで、GBM細胞が薬剤抵抗性を獲得するのではないかと仮説を立て、GBM細胞にPMLを選択的にdegradationさせるヒ素を投与してからmTOR阻害剤を投与し、相乗的にGBM細胞が死滅することをin vitroおよびin vivoで証明した。本研究は、GBMに対するmTOR阻害剤とヒ素(As2O3)の併用療法の有効性を示唆するものである。腫瘍抑制因子であるPMLが腫瘍内で高発現した結果薬剤抵抗性を産むというのは逆説的であるが、同様の結果は、同窓の伊藤圭介君が2008年に報告した慢性骨髄性白血病(CML)に対するAs2O3+AraC併用療法の有効性の論文でも示唆されている通りで、このアイディアをsolid tumorであるGBMにもあてはめることができたところがポイントである。留学中の辛い時期もボストン在住の伊藤君や同じUCLAに留学していた同じく岡野研出身の神山淳君、整形外科や岡野研のラボの人達に温かい励ましやアドバイスがあったからこそ、形にすることができたという。海外でも「慶應医学」の力を結集して得られた、臨床につながる成果である。

なお、この発見を記述した論文が、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 〈PNAS〉)誌オンライン速報版(電子版)に掲載されます。
“PML mediates glioblastoma resistance to mammalian target of rapamycin (mTOR)-targeted therapies” Iwanami A, et al, PNAS (2013)

GBM患者腫瘍組織中のPML発現の変化(上:正常、中:Rapamycin投与前、下:投与後)

GBM患者腫瘍組織中のPML発現の変化(上:正常、中:Rapamycin投与前、下:投与後)

腫瘍の大きさ


  • 一覧に戻る

PAGETOP